3Dプリンターの糸引き対策|リトラクション設定を見直す順番
糸引きは見た目が悪いだけでなく、後処理でバリ取りをする手間が大幅に増えてしまいます。
3Dプリントが完了したとき、作品のあちこちにクモの巣のような細かい樹脂の糸(糸引き / Stringing)がまとわりついていた経験はありませんか?
糸引きは見た目が悪いだけでなく、後処理でバリ取りをする手間が大幅に増えてしまいます。
この記事では、糸引きが発生するメカニズムと、スライサーで調整すべき「リトラクション(引き戻し)」数値、ノズル温度や移動設定の最適化手順をわかりやすく解説します。
1. なぜ糸引き(Stringing)が起きるのか?
糸引きは、エクストルーダー(ヘッド)が樹脂を出さずに別の場所へ移動する際(トラベル移動時)、ノズル先端から溶けた樹脂が垂れ落ちて引っ張られることで発生します。
主な原因は以下の3つです。
- リトラクション(引き戻し)不足: ノズル内の圧力が抜け切っていない。
- ノズル温度が高すぎる: 樹脂がシャバシャバに溶けすぎて垂れ落ちやすい。
- フィラメントの吸湿: 湿気による水蒸気圧で樹脂が押し出されてしまう。
2. スライサーで調整すべき4つの「リトラクション設定」
リトラクション(Retraction)とは、ノズルが移動する瞬間にフィラメントを少しだけ逆方向に巻き戻し、ノズル内の圧力を下げる機能です。
① リトラクション距離(Retraction Distance)
ノズル移動時にフィラメントを引き戻す長さです。プリンターの給紙方式によって大きく異なります。
- ダイレクト式(ヘッドにモーターがあるタイプ / Bambu, Ender-3 S1等):
- 推奨値: 0.5mm 〜 1.5mm
- ボーデン式(チューブで遠くから送るタイプ / Ender-3従来型等):
- 推奨値: 4.0mm 〜 7.0mm
※長すぎるとノズル上部で熱が伝わり、逆にノズル詰まりの原因になるので上げすぎに注意しましょう。
② リトラクション速度(Retraction Speed)
フィラメントを引き戻すスピードです。
- 推奨値: 35mm/s 〜 50mm/s
- 素早く引き抜くことで、樹脂のキレが良くなり糸引きが減少します。
③ トラベル速度(Travel Speed / 移動速度)
非印刷時のヘッドの移動スピードです。
- 推奨値: 150mm/s 〜 250mm/s(機種の限界に合わせて高めに設定)
- 移動速度が速いほど、ノズルから樹脂が垂れ落ちる隙を与えずに次の地点へ到達できます。
④ コーム(Combing)/ ワイプ(Wipe)設定
- Wipe while Retracting(リトラクション時ワイプ): ON推奨
- 移動直前にノズルをモデル内側に少し擦り付ける動作をして、垂れた樹脂を削ぎ落とします。
- Avoid Crossing Outlines(外郭を横切らない): ON推奨
- ヘッド移動時にできるだけモデルの「空洞(空中の移動)」を通らず、モデルの内部を通るルートを選びます。
3. ノズル温度の最適化(温度タワーテスト)
フィラメントの推奨温度範囲(例: PLA 190〜220℃)の中で、温度が高すぎると糸引きが激増します。
糸引きを抑える温度調整の手順
- 現在の設定温度から5℃ずつ下げてみる(例: 210℃ ➔ 205℃ ➔ 200℃)。
- 5℃下げるだけで糸引きがピタッと止まることがよくあります。
- 下げすぎると今度は「層間剥離(強度が落ちる)」が起きるため、強度のバランスを見極めましょう。
※「Temp Tower(温度タワー)」の3Dモデルを出力すると、最も糸引きが少なく綺麗な最適温度が一発で分かります。
4. 湿気対策も忘れない!
設定を完璧にしても糸引きが止まらない場合、原因はフィラメントの吸湿です。
PETGやTPUは、新品から数日部屋に置いておくだけで湿気を吸い、糸引きがひどくなります。スライス設定を疑う前に、フィラメントを乾燥させてみましょう。
5. まとめ
糸引き対策のチェックリスト:
- プリンターの給紙方式に合わせたリトラクション距離になっているか?
- ダイレクト式:
0.8mm〜1.2mm/ ボーデン式:5.0mm〜6.0mm
- ノズル温度が少し高すぎないか?(5℃下げてみる)
- トラベル速度(移動速度)を速く設定しているか?
- フィラメントが湿気を吸っていないか?
これらを順にチェックしていけば、後処理の要らないツルツルで綺麗なプリント結果を手に入れることができます!
作業前に確認したいこと
温度・速度・寸法などの設定値は、機種、ノズル、フィラメント、使用環境で変わります。メーカーの取扱説明書とフィラメントの指定を優先し、変更は一度に一つずつ行って端材で確認してください。高温部・可動部・電装部に触れる作業は、必要に応じて電源を切り、十分に冷ましてから行います。
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